心臓・大血管手術

心臓・大血管手術

冠動脈疾患  弁膜症疾患  大動脈疾患

冠動脈疾患

冠動脈疾患とは

cardiovascular冠動脈とは 心臓の血流を担う大切な血管です。
冠動脈が狭くなり、体を動かして心臓が多く動いたときに心臓に充分血液がいきわたらない状態を狭心症と言います。さらにこれが進行し、急に冠動脈が詰まってしまうと急性心筋梗塞になります。

冠動脈疾患の治療は、薬物療法、経皮的冠動脈形成術(PCI)そして冠動脈バイパス術(CABG)があります。冠動脈バイパス手術は、カテーテルによる治療PCIが不適切または不可能な場合に行います。冠動脈バイパス手術の適応に関しましては、当院ハートチームで十分検討し決定します。

佐賀大学ハートチームによるカンファレンスの様子 佐賀大学ハートチームによるカンファレンスの様子2
佐賀大学ハートチームによるカンファレンスの様子

冠動脈疾患に対する治療

冠動脈バイパス術(心拍動下冠動脈バイパス術)

冠動脈バイパス術式は、心拍動下冠動脈バイパス術を第一選択としております。単独冠動脈バイパス術症例では、80%前後で心拍動下冠動脈バイパス術を施行しております。どうしても心機能が極めて不良な場合は、人工心肺補助下心拍動下冠動脈バイパス術を施行しております。

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右内胸動脈‐左前下行枝、左内胸動脈‐回旋枝による2枝CABG
冠動脈バイパス術吻合のシェーマ
図1:1針吻合、図2:2針吻合
( 出典:末次文祥. 心臓外科医が描いた正しい心臓解剖図. 大阪. メディカ出版2014)

急性心筋梗塞に対する外科治療

  • 心室中隔穿孔
  • 左室自由壁破裂
  • 乳頭筋断裂

陳旧性心筋梗塞に対する外科治療

  • 心室瘤に対する左室形成術、Dor手術など
  • 虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術

弁膜症疾患

心臓の働き、弁とは

図1. 出典「エドワーズライフサイエンス社運営のサイトより転載」

出典「エドワーズライフサイエンス社運営のサイトより転載」(クリックで拡大)

心臓は、全身に血液とともに酸素を供給する、ポンプのような役割をしています。その血液の流れを一方向に維持するために、心臓内の4つの部屋には、それぞれ弁があります。
右心房と右心室の間の弁が「三尖弁」、
右心室と肺動脈の間の弁が「肺動脈弁」、
左心房と左心室の間の弁が「僧帽弁」、
左心室と大動脈の間の弁が「大動脈弁」です。

 弁膜症とは

図2. 出展「エドワーズライフサイエンス社運営のサイトより転載」

出展「エドワーズライフサイエンス社運営のサイトより転載」

心臓にある弁に何らかの障害が生じ、本来の役割を果たせなくなった状態を「弁膜症」といいます。
弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なために血液が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。

 

 弁膜症に対する外科的治療

開心術

図A. 人工心肺装置

人工心肺装置(クリックで拡大)

一般的に弁膜症の手術は開心術で行われます。開心術とは、胸部を開いて、一時的に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置を用い、心臓を切開して手術する方法のことです。
通常は胸の真ん中を縦に切開し、胸骨という骨を縦に切開して手術を行います。

 

 

低侵襲心臓手術
(MICS: Minimally Invasive Cardiac Surgery)

出来る限り小さな傷で行う心臓手術のことで、胸骨を部分的に切開したり、肋骨と肋骨の間を切開したりして手術を行います。傷口が小さいため、手術後の痛みの軽減や美容面の効果があります。また、心臓手術によって受ける体の負担そのものを軽減する効果も期待できます。しかし、手術の安全性を損なう可能性もあり、慎重な適応の決定が必要となります。当科では基本的には行っておりませんが、特殊な症例において行えるような準備は整えております。

弁形成術と弁置換術

自己の弁を温存し、弁の悪い部分を修復する「弁形成術」と、自己の弁を切除し、人工弁に取り替える「弁置換術」があります。どちらの手術を行うかは、患者さんの状態や術前の様々な検査の結果を総合的に判断して、基本的には医師が判断します。しかし、術前に患者さん、ご家族には両方の選択肢を説明させて頂き、ご理解頂いた上で、最終的に決定します。尚、手術時に実際に弁を見て方法を変更することもあります。

弁形成術

図3. 人口弁輪(リング)を用いた僧帽弁形成術

人口弁輪(リング)を用いた
僧帽弁形成術

患者さん自身の弁やその周囲の形を整え、弁の機能を回復させる手術です。弁置換術に比べ、弁形成術の方が術後に感染症や血栓塞栓症の危険性が低く、術後の心臓の働きをより良好に保つという効果も期待できます。しかし、術後に病気が再発する場合もあります。

 

弁置換術

生体弁を用いた大動脈弁置換術

弁置換術は患者さんの悪くなった弁を取り除き、人工弁(生体弁もしくは機械弁)に取り換える手術です。生体弁と機械弁のどちらを用いるかは、患者さんの年齢や生活様式などを考え、患者さん、ご家族と相談の上、最終的に決定します。

生体弁 構造的劣化の問題がありますが、一生涯の抗凝固療法(ワーファリンの内服)の必要はありません。
機械弁 構造的には丈夫で長持ちしますが、一生涯の抗凝固療法(ワーファリンの内服)の必要があります。

弁置換術を受けた場合にも術後に再手術が必要になることがあります。
生体弁は感染、弁の劣化などの問題があり、機械弁は感染、血栓(血の塊)が付着することによって弁の動きが悪くなるなどの問題があります。

生体弁を用いた大動脈弁置換術の手順(①~⑤) 現在、大動脈弁位に使用可能な生体弁 大動脈弁位に用いられる機械弁(例)
生体弁を用いた大動脈弁置換術の手順(①~⑤)
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現在、大動脈弁位に使用可能な生体弁
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*「Epic and Trifecta are trademarks of St. Jude Medical, Inc. or its related companies. Reprinted with permission of St. Jude Medical, (c)2015. All rights reserved.」
大動脈弁位に用いられる機械弁(例)
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*「SJM and St. Jude Medical are trademarks of St. Jude Medical, Inc. or its related companies. Reprinted with permission of St. Jude Medical, (c)2015. All rights reserved.」

大動脈弁

構造上、一般的には弁置換術が行われることが多いです。しかし、症例によっては弁形成術が可能な場合もあり、当科でも積極的に行っております。

Remodeling手術 写真1. 先天性の二尖弁に対する大動脈弁形成術(例)

Remodeling手術
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先天性の二尖弁に対する大動脈弁形成術(例)
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経カテーテル的大動脈弁移植術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation)に関してはこちらのページへ

 僧帽弁

現在、僧帽弁形成術に用いられる様々な人工弁輪(リング)

現在、僧帽弁形成術に用いられる様々な人工弁輪(リング)
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僧帽弁の閉鎖不全の場合には、構造上、弁形成術が選択される場合が多いです。当科でも基本的には弁形成術を第一選択としております。尚、僧帽弁の狭窄の場合には、形成術は困難であり、弁置換術が選択されます。
(*「SJM Tailor is trademarks of St. Jude Medical, Inc. or its related companies. Reprinted with permission of St. Jude Medical, (c)2015. All rights reserved.」)

 三尖弁

一般的には弁形成術が行われますが、弁置換術が行われる場合もあります。

 肺動脈弁

成人の患者さんにおいては手術の対象となることが少ないです。

大動脈疾患

大動脈

肺で酸素を受け取った血液は、心臓から全身の各臓器に動脈という管を通して送られます。動脈の中で、心臓から起始して胸腹部のほぼ中心を走行する大きな動脈を大動脈といいます。

大動脈の病気の中で、治療の対象となるのは大きく2種類に分けられます。

 大動脈瘤

大動脈が何らかの原因で大きくなりコブの様にふくれたものが大動脈瘤です。大動脈瘤が危険な理由は、治療せず放置するとだんだん大きくなり破裂してしまうからです。破裂するまでは無症状のことが多いのですが、一旦破裂してしまうとあっという間に大量の出血によるショック状態に陥り死亡する可能性が高くなります。そのため、大動脈瘤は破裂する前に治療する必要があります。
内科的治療では治すことができないため、根治的な治療としては外科手術が必要となります。一般的には瘤径が5 cmを超えてくると破裂の危険性が上がると言われており治療を考慮すべきと考えられます。

手術としては人工の血管でコブになった大動脈を入れ替える人工血管置換術があります。
入れ替える部位により、上行大動脈置換術(心臓から出てすぐの部分の大動脈瘤)、弓部大動脈置換術(下図左)、胸腹部大動脈置換術(胸と腹の間で、脊髄、胃腸、肝臓、腎臓などの臓器に分枝を出している部分の大動脈瘤)、腹部大動脈置換術(腹部にあり、腸、下肢を栄養する分枝をだす部分の大動脈瘤:下図右)などの術式があります。


弓部大動脈置換術

腹部大動脈置換術

手術の際は、大動脈の置換範囲により、人工心肺使用による心臓停止、脳分離循環(弓部より分枝する脳血管を個別に潅流)、低体温下循環停止等の大がかりな補助手段が必要となることがあります。医療の進歩により治療成績は、大幅に改善してきましたが、依然として一定の危険性を伴う手術であり、大動脈瘤の手術適応は経過観察した場合のリスクと手術のリスクを比較して総合的に決定することになります。

患者様の状態により、人工血管置換術ステントグラフト治療を選択します。

人工血管置換術の方が、確実性が高く、長期成績も安定しております。しかし、お体に負担が大きいため、人工血管置換手術の危険性が高い方にはステントグラフト治療をお勧めすることもあります。ステントグラフト治療につきましては、こちらを参照ください。

 大動脈解離

大動脈の内壁に裂け目が生じ、これに引き続いて大動脈の壁が円周方向および軸方向に裂けていく病気です。これは、前兆なく突然起こり、通常激しい痛みを伴います。裂けた大動脈外壁からの血液のしみ出しが心臓周囲に貯まると圧迫によるショック状態(心タンポナーデ)となり、最悪の場合は、心停止に陥ります。
また、肺周囲に出血しますと大量出血と肺の圧迫によりやはり極めて危険な状態に陥ります。また大動脈から枝分かれしている分枝、つまり心臓の筋肉を栄養する血管である冠動脈や脳血管、あるいは腹部の主要臓器(肝臓、腎臓、腸管など)の血管の流れが途絶えることによりそれぞれの臓器が働かなくなることもあります。そのため、大動脈解離の急性期においては、迅速な診断及び状況にあった適切な処置が救命の鍵となります。

人工血管による置換手術

(クリックすると拡大)

手術としては、大動脈解離の起点である大動脈内壁の裂け目を含む大動脈の人工血管による置換手術を緊急で行うことが基本となります。置換範囲によって術式が複雑となることもあり、定型化した予定手術と比べて手術成績にバラツキがあるのも事実です。

当科では、伝統的に大動脈疾患に対して24時間体制で、積極的に治療に取り組んでおり、特に、急性大動脈解離の手術成績は様々な術式の工夫により、年々向上し、全国平均よりも良い手術成績を残しております。

 


心臓・大血管の外科治療に関しまして、何か疑問な点がありましたら、いつでもお気軽にご相談下さい。