当科研究の特色

当科研究の特色

iPS細胞を始めとする各種細胞の分化誘導技術がめざましく発展する中、組織工学(ティッシュエンジニアリング)による臓器再生をテーマとした研究・開発が加速しています。また2014年に再生医療の特性を踏まえた新たな薬事法と、再生医療の安全性確保に関する法律が施行され、国家プロジェクトとしても注目されてます。
当教室では接着系細胞が元来有する基本的機能である細胞凝集現象に着目し、さらにそれを一つの単位として複雑な形状組織を作成するバイオ3Dプリンタ(開発者:佐賀大学 臓器再生医工学 中山功一教授)を用いた共同研究を2010年から開始しました。バイオ3Dプリンタは細胞凝集塊(スフェロイド)自動積層装置で、任意のXYZの位置に複数の細胞を、生体材料なしに配置できるロボット技術です。

心臓血管外科領域における本技術の研究成果は、日本心臓血管外科学会や日本循環器学会などの国内の学術総会のみならず、国際心肺移植学会(ISHLT)や米国心臓協会学術集会(AHA)など主要な国際学会でも報告してきました。尚、バイオ3Dプリンタを用いた血管再生プロジェクトは2014年11月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)機能造形プロジェクトの一つに採択され、研究を重ねることで徐々に脚光を浴びてきております(2015年4月から日本医療研究開発機構(AMED)に移管)。
作成した血管の力学的評価や機能解析、ミニブタを用いた大動物への移植実験なども行っており、将来的には末期腎不全患者さんへの透析ブラッドアクセス用人工血管、冠動脈バイパス術のための小口径血管、足関節以下の遠位バイパス用小口径血管など、外科的血行再建に応用できる新たな人工血管の研究、開発を行っています。

また当教室では、日本で開発されたヒトiPS細胞の技術を心臓の再生治療に応用する研究も開始しました。現在、ヒトiPS由来心筋細胞の維持培養の確立、機能解析など研究段階でありますが本研究成果が発展し、臨床にFeedbackできれば、多くの心臓移植待機患者さんでの補助人工心臓からの離脱が可能になり、心臓移植が抱える多くの問題解決につながると考えております。
このように外来異物を全く含まず細胞だけで循環器系臓器を作ることを、当科研究室の主なテーマとしており、移植後の免疫反応や異物感染の危険を回避できる新たな臓器再生へのツールとなることを期待しています。リサーチマインドを持った外科医の視点から、臨床面では未だ解決できない問題の克服につながる研究を行い、重症心不全や血管心不全に関わらず、難治性の呼吸器外科疾患にも役立つ臓器再生にもチャレンジしたいと考えております。
産学連携を重視し、佐賀から世界へ、革新を起すようなTranslational Researchを推進しています。