ステントグラフト治療

ステントグラフト内挿術 ~大動脈瘤に対する低侵襲治療~

ステントグラフト内挿術とは?

本邦で使用可能である、主なステントグラフト<br /> 上段:腹部大動脈用、下段:胸部大動脈用

本邦で使用可能である、主なステントグラフト
上段:腹部大動脈用、下段:胸部大動脈用

ステントグラフトとは,人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管のことで、これを圧縮して細いカテーテルの中に収納して使用します。

脚の付け根を4〜5cm切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤のある部位まで運んだところで収納したステントグラフトを放出します。この方法だと胸部や腹部を切開する必要はありません。放出されたステントグラフトは、金属バネの力と血圧により広がって血管内壁に張り付けられるので、外科手術のように直接縫いつけなくても自然に固定されます。大動脈瘤は切除されず残りますが、瘤はステントグラフトにより蓋をされることで血流が無くなり、次第に小さくなる傾向がみられます。また、たとえ瘤が縮小しなくても、拡大を防止することで破裂の危険性がなくなります。

 当院はステントグラフト指導医が在籍する実施施設です

ステントグラフト治療は比較的新しい技術であり、この治療を安全確実に実施するため、血管病に関連する10の医学会が合同して設立した「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」により、決められた実施基準を満たす病院と医師の審査が行われています。

当院もその実施基準を満たした、腹部大動脈瘤および胸部大動脈瘤に対するステントグラフト実施施設です。また、腹部および胸部大動脈瘤ステントグラフトの指導医が2名在籍しており、様々な病変に対するステントグラフト治療を行っております。

ハイブリッド手術室(Hybrid Operative Suite)

当院には新しいハイブリッド手術室が導入になりました。
ハイブリッド手術室とは設置型透視装置を備えた手術室のことで、通常の心臓・血管手術が行える清潔度の高い透視室のことです。

佐賀大学病院の新しいハイブリッド手術室

当院では2010年に九州で初めて床置き式の多軸血管撮影装置 Artis Zeego(SIEMENS社)を手術室に導入しました。さらに、手術室再整備に伴い2014年1月から、万能な手術専用のテーブル(MAGNUS OR Table System:MAQUET社)との組み合わせによる新たなハイブリッド手術室にて治療を行う事が可能となりました。広さも約75m2と広く、最新鋭の設備と快適な手術空間のもとステントグラフト治療を行うことができます。

また、当院ではこのArtis Zeegoにて術中にCTを撮影することができ(Dyna CT)、術前の画像情報を術中の画像に重ね合わせることによりステントグラフト治療のアシストとして利用しております。

腹部大動脈瘤のステントグラフト治療(EVAR)

全ての患者様にこの治療を行うことはできませんが、開腹手術のリスクが高く、ステントグラフトに適した解剖の患者様に治療を行っています。造影CT検査にて、大動脈の形態、大きさなどを細かく測定し、最適のデバイスを使用するように心がけております。

stent-graft3 腹部大動脈瘤のステントグラフト治療(EVAR)

胸部大動脈瘤へのステントグラフト治療(TEVAR)

胸部大動脈瘤へのステントグラフト治療(TEVAR)

胸部大動脈瘤へのステントグラフト治療(TEVAR)

 

胸部大動脈はステントグラフト治療の低侵襲性がより顕著になる部位です。開胸や人工心肺を必要とせず、大動脈瘤から脳、腕への動脈、腹部臓器への動脈への距離が十分にあれば、非常にシンプルに治療可能です。

しかし、開胸手術と同様に、術後脳梗塞、脊髄麻痺も低率ながら認めるため、十分な術前検査が必要です。

 ハイブリッドステントグラフト治療(人工血管によるバイパス+TEVAR)

弓部大動脈瘤に対するバイパス併施下胸部ステントグラフト内挿術開胸手術のリスクが高く、大動脈瘤が脳、腕への分枝(弓部分枝)に近いところにある方へは、人工血管でバイパスを行った後にステントグラフト治療を行う、いわゆるハイブリッドステントグラフト治療を積極的に行っております。

胸部から腹部大動脈にまたがる胸腹部大動脈瘤の患者様にも同様に行っております。この方法により大動脈瘤が脳、腕への動脈または胃、肝臓、腸、腎臓への動脈に近い患者様にもステントグラフトが可能となります。しかし、通常のステントグラフト治療より手技がやや複雑になるため、手術時間が長くなりお体への負担はやや大きくなります。

胸部、腹部の重複大動脈瘤に対する ステントグラフト治療 慢性B型大動脈解離に ハイブリッドステントグラフト治療
胸部、腹部の重複大動脈瘤に対する
ステントグラフト治療

左:全景/胸部は右鎖骨下-左鎖骨下動脈バイパスを併施しステントグラフト治療を施行/右上:胸部ステントグラフト治療後/右下:左腎動脈はステントグラフトを開窓し留置。術後CTで良好な開存を得ている。
慢性B型大動脈解離に
ハイブリッドステントグラフト治療

左:術前/右:腹部大動脈人工血管より腹腔動脈、上腸間膜動脈、両側腎動脈へのバイパス施行後、2期的に胸腹部ステントグラフト内挿術施行。

スタンフォードB型大動脈解離に対する亜急性期ステントグラフト治療

B型大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖
左:術前、右:鎖骨下動脈バイパス併施下ステントグラフト内挿術

CA NienaberらのINSTEAD-XL trial*1においてスタンフォードB型大動脈解離に対する早期ステントグラフト治療の長期成績が明らかになり、この疾患に対する治療が大きく変わろうとしております。当院でも長年にわたり合併症のないB型大動脈解離に対しては、瘤拡大後の慢性期に破裂予防の手術を行う方針としていたましたが、2014年2月より拡大が予想されるものに対し亜急性期(3ヶ月以内)でのステントグラフト介入を行っております。
今だに議論があるところですが、現在のところ良好な早期成績を得ております。

*1Circ Cardiovasc Interv. 2013;6:407-416

型大動脈解離に対するステントグラフト治療後のCT
上:術前、偽腔が開存している。
下:治療6か月後、胸部の偽腔が消失し、腹部以下も偽腔が縮小している。

  低侵襲心臓血管手術症例数

stent-graft11

TAVI:経カテーテル的大動脈弁留置術
TEVAR:胸部大動脈ステントグラフト治療
EVAR:腹部大動脈、腸骨動脈ステントグラフト治療

 ステントグラフト治療に関しての問い合わせ

ステントグラフト担当医 柚木純二(ゆのき じゅんじ:心臓血管外科)
田中厚寿(たなか あつひさ:心臓血管外科)
TEL 0952-34-2345(胸部・心臓血管外科医局)
FAX 0952-34-2061(胸部・心臓血管外科医局)