TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)
~手術をあきらめていた重症大動脈弁狭窄症の患者様へ~

TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)とは?

「TAVI」とはTranscatheter Aortic Valve Implantationの略で、経カテーテル大動脈弁留置術、つまりカテーテル(細い管)を使い人工弁を留置するという新たな弁膜症の治療法です。
「TAVR」Transcatheter Aortic Valve Replacement、経カテーテル大動脈弁置換術ともいいます。
これにより胸を大きく開くことなく、心臓を止めずに治療する事が可能で、体に負担が少ない弁膜症治療として全世界で広がりをみせています。欧米を中心に全世界500以上の施設で20万人以上の患者様が治療を受けています。

TAVIの対象となる患者様は?

この治療の対象となる方は、重症の大動脈弁狭窄症で、かつ外科的人工弁置換術の危険性が高い、もしくは手術不可能と判断された患者様です。
大動脈弁狭窄症とは心臓の出口にある大動脈弁が狭くなり、息切れ、動悸、疲れやすさなどを自覚し、時に胸痛、失神、心不全などの重い症状がでます。症状が現れた患者様の約半数は2年以内に命を落とすと言われています。

新しい治療法(TAVI)が加わりました

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その治療ですが、現在も通常の開胸心臓手術が可能な方は外科的人工弁置換術が第一選択であるのは変わりありません。開胸心臓手術の成績も良好で、長年の経験により長期成績が担保されているからです。しかし近年、加療を受けられる方がご高齢の方が増え、合併症をお持ちの方も多くなってきております。そのために、手術を早々にあきらめてしまい心臓外科の病院まで紹介されない患者様が約3割程いると言われています。そのような方もこのTAVIの適応と考えております。

しかし、生まれつき弁が2尖弁の方、透析加療を受けている方、末期の悪性腫瘍がある方などは現在のところTAVI治療を受けることが出来ません。その他にもTAVI治療が困難な方もおられますので、精密検査ののち治療が可能かどうかをご説明しております。

TAVI治療はどのようにして行う?

治療は基本的に全身麻酔で行います。
主な弁挿入方法は2つあります。経大腿アプローチ (Trans-Femoral, TFアプローチ)と経心尖アプローチ(Trans-Apical, TAアプローチ)です。患者さんの状態により,どちらかの方法を選択しております。どちらのアプローチ方法でも、従来の開胸手術よりもお体にかかる負担は少ないと考えております。

経大腿アプローチ (TFアプローチ)は、折りたたまれた生体弁を装着した太いボールペン程のカテーテルを太ももの付け根にある大腿動脈に入れ、心臓まで運びます。通常の患者様はこちらのアプローチを第一選択で考えます。4-5cm程の皮膚切開で、動脈を露出して行っておりますが、血管の性状がいい方は、穿刺部閉鎖用のデバイスを用いて切開せずに行う試みも行っております。

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経心尖アプローチ (TAアプローチ)は、左側の肋骨の間を6-7cm程小さく切開し心臓の尖端から、折りたたまれた生体弁を装着したカテーテルを挿入します。

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両アプローチとも、生体弁が大動脈弁の位置に到達したらバルーン(風船)を膨らませ、生体弁を広げ留置します。
生体弁を留置した後はカテーテルを抜き取り、留置された生体弁はその直後から患者様の新たな弁として機能します。

佐賀の地でTAVIを受けて頂くために…

都市部に移動することなく、この佐賀県でもTAVI治療を受けて頂くために当佐賀大学でも心臓血管外科、循環器内科、麻酔科を中心としたTAVIハートチームを結成し約1年間準備を行いました。

手術見学、合同カンファレンス、手術室でのシュミレーション等を行い、2014年3月10日佐賀県で初めて(九州では4番目)、TAVR関連協議会より実施施設として認定されました。

合同カンファレンス

合同カンファレンス

実施施設証明書

実施施設証明書

手術室でのシュミレーション

手術室でのシュミレーション

ハートチームにて手技のトレーニングを受け(佐賀大学TAVIファンダメンタルトレーニングメンバー)、2014年3月26日慶應義塾大学林田健太郎先生の御指導のもと、第1例目を合併症無く施行することが出来ました。

手技のトレーニング

手技のトレーニング

佐賀大学TAVIファンダメンタルトレーニングメンバー

佐賀大学TAVIファンダメンタルトレーニングメンバー

第1例目手術

第1例目手術

記者会見記者会見 佐賀新聞 2014年5月1日クリックすると拡大します
記者会見

当院の特徴と早期成績

<ハイブリッド手術室(Hybrid Operative Suite)>

TAVIの実施にはハイブリッド手術室が必須となります。
ハイブリッド手術室とは設置型透視装置を備えた手術室のことで、通常の心臓手術が行える清潔度の高い透視室のことです。
当院では2010年に九州で初めて床置き式の多軸血管撮影装置 Artis Zeego(SIEMENS社)を手術室に導入しました。さらに、手術室再整備に伴い2014年1月から、万能な手術専用のテーブル(MAGNUS OR Table System:MAQUET社)との組み合わせによる新たなハイブリッド手術室にて治療を行う事が可能となりました。広さも約75m2と広く、最新鋭の設備と快適な手術空間のもとTAVI導入を行うことができました。

ハイブリッド手術室 ハイブリッド手術室

また、当院ではこのArtis Zeegoにて術中にCTを撮影することができ(Dyna CT)、その画像情報をTAVI弁留置のアシストとして利用しております。

<佐賀大学TAVIハートチーム(TAVI Heart Team in Saga University)>

当院は、TAVI導入においてステントグラフト指導医3人と心臓カテーテル治療のエキスパート2人を中心としたチーム編成により、血管内治療に特化したチームを組む事ができました。また、心エコー専門医、経験豊富な心臓手術麻酔医、手術室スタッフ(看護師、放射線技師、臨床工学士)とともに現在もTAVI治療を行っております。

ハートチーム 佐賀大学TAVIハートチーム
佐賀大学TAVIハートチーム

TAVI治療が最も望ましいと思われる患者様の選択やTAVI治療中に起こり得る合併症への対策に重点を置き、安全性を最重要視しTAVI治療を行っております。

経大腿アプローチ指導医制卒業記念(2014/7/9)

経大腿アプローチ指導医制卒業記念(2014/7/9)

<佐賀大学TAVIの初期成績>

2016年1月末現在40名の患者様(大腿動脈アプローチ28名、心尖部アプローチ12名)にTAVI治療を行い、病院死亡0%、開心術への移行0%、ペースメーカー植え込み0%と良好な初期成績をおさめております。

TAVI治療の問題点

<TAVI弁の耐久性>

TAVIはまだ新しい治療でありその歴史が浅く、治療の対象になる方がご高齢であり、長期の耐久性が不明です。文献*1より5年程度の耐久性は確認されていますが、それ以上はまだ未知な部分が多いという現状です。通常の開心術で使用するウシ心のう膜生体弁に関しては、20年の長期成績が報告されています。 (*1Journal of the American Collage of Cardiology Vol.61 No4. 2013)

<TAVI特有の合併症>

TAVIは低侵襲で、お体に負担が少ないのですが、特有の合併症が存在することも事実で、頻度は多くありませんが以下のような合併症が起こる可能性があります。
太いカテーテルを挙上する際におこる血管損傷、ワイヤーなどにより起こる心室穿孔、弁輪部の破裂、循環補助装置を必要とする循環不全、冠動脈閉塞症による冠動脈ステント留置、心室内伝道障害による永久的ペースメーカー植え込みなどです。
日本のTAVR関連学会からの2015年5月までの報告では30日死亡率は1.4%と報告されています。

TAVI治療に関しての問い合わせ

「TAVIの成功はハートチームにかかっており、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、リハビリ専門医、並びにコメディカルなどの診療科が一丸になることが重要な要因である。」と言われています。

佐賀大学TAVIハートチームもチーム一丸となって、患者様への安全性を最重要視しTAVI治療を行っております。お気軽にお問い合せください。

TAVI担当医 柚木純二(ゆのき じゅんじ:心臓血管外科)
挽地 裕(ひきち ゆたか:循環器内科)
下村光洋(しもむら みつひろ:循環器内科)
TEL 0952-34-2345(胸部・心臓血管外科医局)
0952-34-2364(循環器内科医局)
FAX 0952-34-2061(胸部・心臓血管外科医局)
TAVI指導医制卒業・完全独立記念(2015/6/10)

TAVI指導医制卒業・完全独立記念(2015/6/10)