呼吸器外科

当科の特色

目標理念

呼吸器外科の対象とする疾患は、肺癌、胸膜中皮腫、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍などの悪性疾患に加え、気胸、気道狭窄などを取り扱っております。特に肺癌は日本人の癌の中でも、男性では死亡率第一位であり、女性でも第三位を占めており全癌腫の中で最も治りにくい癌とされています。その肺癌の治療成績を向上させるため当院では呼吸器内科、外科、放射線科、病理で合同カンファレンアスを行い、患者さんにとって最新で最善の治療を提供できるように心がけています。

当科としては、ロボット支援下手術や単孔式胸腔鏡手術を導入しており、できるだけ患者さんに優しい低侵襲手術を心がけており、早期の社会復帰を可能としております。

 

– 呼吸器外科部門目標 –

  • 地域完結型医療の確立
  • 地域の医療機関との連携
  • 医師の技術、知識、倫理観の教育
  • 困難な医療に対する挑戦
  • 新たな医療技術の開発研究

 

 スタッフ紹介

スタッフ・プロフィールはこちらから

対象疾患と主な手術

原発性肺がん

【疫学】
肺癌は男女ともその罹患率は増加しており()、部位別ガン死亡率も胃癌、大腸癌を抑え肺癌が一位となっています。
当科における手術数、特に肺癌の手術件数も年々増加しております。(図2)
男性の肺癌の大多数は喫煙と関係がありますが、近年喫煙歴の全くない女性の肺癌も増加しており、遺伝子異常による発癌が解明されつつあります。

図2:佐賀大学 呼吸器外科手術数の推移(クリックで拡大)

【組織型】
肺癌は、その組織型により小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分類され、小細胞肺癌は手術になることは少なく抗がん剤や放射線治療が主になります。非小細胞肺癌が主に手術の適応となりますが、はさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌に分類されます。(図3)

図3:肺癌の種類(クリックで拡大)

【病期診断】
肺癌の診断がついた場合、癌の進行度を評価するため、病期診断を行います。これにより肺癌の治療方針を決定することになります。病期は主に①腫瘍の状況(大きさなど)、②リンパ節転移の状況、③肺外への病気の進展(遠隔転移)の状況を組み合わせて決定し、最終的な治療方針が決定されます。()手術適応となるのはIII期までとなります。

 

 

【手術】
外科治療(手術)が選択された場合の、流れを(図5)に示します。入院から退院まで約2週間です。退院後は最終的な病理結果(癌の進行度)により、化学療法(抗がん剤治療)が必要になる場合があります。
肺癌の手術は開胸もしくは胸腔鏡にて行います。最近ではほとんどの手術を胸腔鏡、もしくはロボット(ダヴィンチ)で行います。(図6)胸腔鏡やロボット手術は創も小さく、肋骨を切断しないため術後も早期退院が期待でき、より早期の社会復帰が可能となります。

○単孔式胸腔鏡手術:
4cm位の小さな孔ひとつで手術を行います。手術創が一つであるため患者さんの痛みも少なく、通常の胸腔鏡手術よりも低侵襲で行えます。

○ロボット支援下手術:
呼吸器外科の領域でも2018年4月より肺癌、縦隔腫瘍の手術でロボット支援下手術が保険適応となりました。当科でも2022年より本手術を導入しております。ロボット手術は、低侵襲であるだけでなく3Dカメラを使用したリアルな立体画像を最大15倍まで拡大視でき、手ブレのない人間の関節以上に動くアーム(指)により、より繊細で精密な手術を可能とします。(図7)

図5:肺癌治療の流れ(クリックで拡大) 図6:主な手術アプローチ(クリックで拡大)

図7:ロボット手術風景

【予後】
手術をしても、完全に根治できるわけではなく早期であっても再発される方もいます。外科切除をおこなった症例のステージ別の5年生存率を示します。(図8)ステージが進むほど生存率は悪くなりますが、以前に比べて新しい抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが使用できますので、決して治療法がないわけではありません。そのような症例には呼吸器センターを有しており呼吸器外科、内科が協力しながら治療に携わっていきます。

図8:5年生存率

 

自然気胸、続発性気胸、巨大肺嚢胞

気胸とは、ブラと呼ばれる肺の表面にできた袋(図9)に穴が空いて肺がしぼんだ状態です。(肺がパンクした状態)高校生や大学生の若年男性に多いが、高齢者の場合は喫煙が関与している。ほとんど胸腔鏡手術で30〜40分程度の手術です。術後は2〜3日で退院可能となります。

図9:肺嚢胞(ブラ)

 

縦隔腫瘍

縦隔とは、左右の肺を縦に隔てる部位をいい、胸腺、心臓、大血管、気管、食道が存在 します。部位により前縦隔、後縦隔、上縦隔、中縦隔、下縦隔に分けられ、各々の部位で好発する腫瘍が異なります。また腫瘍の種類によっては、胸腔鏡による手術が可能です。(図10)胸腔鏡のみで手術実施した場合、入院期間の大幅な短縮につながり、より早期の社会復帰が可能となります。

図10:縦隔腫瘍手術創(クリックで拡大)

 

気道狭窄(気道インターベンション)

当施設は、硬性気管支鏡(硬性鏡)(図11)による気道インターベンションを積極的に行っております。硬性鏡は診断的価値という点で軟性気管支鏡にその地位を譲ったものの、現在でもなお気道狭窄解除、異物摘出という点では重要な手技です。現在 硬性鏡に熟練した医師も少なくなり遠方より患者さんを受け入れています。末期肺癌患者のQOL向上のための気道狭窄解除、バルーン拡張、ステント挿入、誤嚥による気道異物摘出をおこなっております。

図11:気道狭窄に対するステント治療(クリックで拡大)