末梢血管手術

末梢血管手術

当科で行っている、末梢血管疾患と治療法についてご紹介します。

① 腹部大動脈瘤(腸骨動脈瘤)

腹部大動脈瘤とは、腹腔内にある大動脈が、瘤化する病気です。放置すると年余に大きさが増大し、突然破裂する恐ろしい病気です。治療の目的は破裂(突然死)の予防です。当科では、従来からの治療法である開腹下の腹部大動脈人工血管置換術ステントグラフトによる治療法のどちらも施行可能です。
腹部大動脈瘤を指摘され当科へ紹介された患者様は、開腹もしくはステント治療のどちらが適しているか、また手術に伴う危険性を判断するため全身精査を行います。診療科として症例ごとに十分、手術適応、危険性、合併症への対応などを吟味させていただきます。患者様およびご家族へ、最適な治療法およびその危険性まで御説明させていただき最終的な治療法をご本人、ご家族様に決定していただいております。

腹部大動脈瘤(腸骨動脈瘤含む)に対する開腹での手術は、破裂の危険性のある動脈瘤を切除して、人工血管で置換する手術となります。手術時間は動脈瘤の形態や、個々人の年齢、体格などにもよりますが、3から6時間程度の手術となります。入院期間は概ね2週間程度となります。以下に手術前と手術後の腹部大動脈のCTを提示します。
近年開発された、低侵襲なステントグラフト治療に関しては、こちらのページをご参照ください。

腹部大動脈瘤に対する、開腹下の人工血管置換術

人工血管置換術前

人工血管置換術前

人工血管置換術後

人工血管置換術後

腹部大動脈瘤に対する、開腹下の人工血管置換術

②下肢閉塞性動脈硬化症

動脈硬化の進行により、末梢動脈(主に下肢)が狭窄、閉塞し循環不全(虚血)をきたす病気です。症状としては、歩行時の下肢の疼痛です(爬行)。症状が軽度の場合は、内服や運動療法などの保存的治療で改善しますが、中等度以上になると血行再建する治療が必要となります。さらに進行し、重症化すると血行再建に加え下肢切断を余儀なくされる可能性のある怖い病気であるため早めの専門機関の受診が必要です。

来院頂いた患者様には、問診・診察のうえ、諸検査(採血、CT検査など)を行い病状を把握させて頂きます。判断が難しい重篤・病状が複雑な症例などは、毎週行われている、循環器内科、形成外科、血管外科合同の下肢救済カンファで検討させて頂きベストな治療を提案できるよう心がけております。
当科では、病状・重症度を把握し以下のように治療を行っております。

軽症の場合、内服加療と運動療法を選択します。

外腸骨動脈閉塞症例に対する血管内治療

中等症の患者様で、血行再建が必要だと判断した場合は、血管内治療で完治できる場合は、循環器内科にお願いし下肢の経皮的血管形成術(PTA)を行います。
PTAが施行不能もしくは不成功になった場合は、外科的な血行再建を行います。

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外腸骨動脈閉塞症例に対する
血管内治療術前
外腸骨動脈閉塞症例に対する
血管内治療術後
外腸骨動脈閉塞症例に対する血管内治療

 

当科で行っている代表的な手術前後の造影CTを示します。

手術は、狭窄・閉塞している血管に対して、人工血管でバイパスを行う手術が主体となります。手術の規模は、病変のある血管の部位や重症度により異なりますが、通常、一側の血行再建では、1から3時間程度の手術時間で終了します。入院期間は1週間から2週間程度です。

大動脈―大腿動脈バイパス術

腹部大動脈から腸骨動脈レベルで閉塞した患者様に行う手術です。

腹部大動脈閉塞症例に対する大動脈-両側大腿動脈バイパス術(人工血管使用) 腹部大動脈閉塞症例に対する大動脈-両側大腿動脈バイパス術(人工血管使用)

腹部大動脈閉塞症例に対する大動脈-両側大腿動脈バイパス術(人工血管使用)

腋窩—大腿動脈バイパス術

腕へと流れる腋窩動脈から人工血管を介して足の大腿動脈へとバイパス(迂回路)を作成する手術です。

腋窩—大腿動脈バイパス術 腋窩—大腿動脈バイパス術

腋窩-両側大腿動脈バイパス術(人工血管使用)

大腿―大腿動脈バイパス術

左右の大腿動脈間を人工血管でバイパスし、片方の足の血流を改善させる手術です。

左腸骨動脈閉塞症例に対する大腿動脈-大腿動脈バイパス術 左腸骨動脈閉塞症例に対する大腿動脈-大腿動脈バイパス術
左腸骨動脈閉塞症例に対する大腿動脈-大腿動脈バイパス術

大腿-膝窩動脈バイパス術

足の浅大腿動脈が閉塞した場合、閉塞部位より末梢の動脈への血流を改善させるため人工血管や自分の足の静脈(大伏在静脈)を用いてバイパスを作成する手術です。

両側浅大腿動脈閉塞に対する両側大腿動脈-膝窩動脈バイパス術(人工血管使用) 両側浅大腿動脈閉塞に対する両側大腿動脈-膝窩動脈バイパス術(人工血管使用)
両側浅大腿動脈閉塞に対する両側大腿動脈-膝窩動脈バイパス術(人工血管使用)

下肢救済カンファランスの風景です。
複数科にまたがりいろんな意見を取り入れて治療方針を決定しています。

カンファレンス風景

重症下肢虚血に対する手術

下肢に難治性の潰瘍や、感染、壊死をきたした症例に対する血行再建を当院形成外科との合同チームで治療を行っています。自己の下肢の静脈(大伏在静脈)を用いて膝下の非常に細い血管にバイパスを行い下肢の血流を改善させる手術です。

重症下肢虚血に対する血行再建術

重症下肢虚血に対する血行再建術

壊死に陥った組織を、デブリードメントし治癒を促す治療も形成外科のチームが行っております。

③下肢静脈瘤

下肢の静脈が、様々な原因により拡張・怒張し瘤を形成する病気です。静脈には動脈と異なり逆流を防止するため弁がついています。この弁に逆流をきたし、静脈に慢性的な鬱滞をきたすことが成因です。弁の逆流の原因については完全に解明されてませんが、加齢、遺伝、妊娠や出産、女性ホルモン、長時間の立ち仕事などがありますが、はっきりとわかっていません。
症状は、下肢の浮腫、疲労感、こむら返りなどから、皮膚炎、色素沈着、血栓性静脈炎、皮膚潰瘍など軽度から重症まで様々です。

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3次元CTで再構築した下腿の静脈瘤

治療に関して、静脈瘤が軽度で症状などがない場合は経過観察もしくは弾性ストッキングの着用を行います。
肉眼的に顕著な静脈瘤で、静脈瘤に伴う症状などがあり、御本人が治療を強く希望される場合は外科的加療を行います。

下肢静脈瘤に対する、当科での加療は、従来法である高位結紮、ストリッピング、静脈瘤切除を症例に応じて組み合わせて加療しております。手術時間は通常1から3時間程度です。手術前日入院し術後2-3日で自宅退院していただいております。

近年、下肢静脈瘤に対して、レーザー治療が行われております。今後当科での導入も検討しておりますが、当科では2015年3月現在でも導入を行っておりません。治療適応の患者様で、レーザー治療をご希望される場合は、他の施設を紹介させていただいております。

④ 内臓・末梢動脈疾患

腹部内臓動脈、四肢の動脈瘤等に対して外科的加療を行っています。腹部大動脈瘤や下肢閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤などと比較し頻度は少ないですが、末梢動脈瘤や、仮性動脈瘤、腹腔内の動脈の外科的加療も各診療科と連携を取りながら治療成績の改善を目指して治療を行っております。

急性大動脈解離に合併した腸管虚血に対する腸骨動脈-上腸間膜動脈バイパス術

⑤ 急性及び慢性の動脈血栓塞栓閉塞症

心房細動を代表とした不整脈を起因とする心臓内や血管内の血栓が末梢の動脈へ塞栓をきたし重篤な虚血症状をきたす疾患です。突然の、患側の痛みや麻痺で発症します。放置すると、壊死、生命にかかわる病気です。
当科では、下肢や上肢の急性動脈塞栓症に対して血栓除去術を行っております。

下腿の急性動脈塞栓症の血栓除去術前後CT

⑥ 維持透析患者にたいするシャント関連手術

近年、末期腎不全の患者様は、維持透析を行うために体表に穿刺可能な血流豊富な血管の短絡路(シャント)を作成する必要があります。

当科では、腎臓内科と併診しながら、人工血管を用いたグラフトシャント造設術や、シャントの血栓閉塞、感染症などに対する加療も行っています。